「自分の会社に使える時間は減る。売上にも影響が出る。収入面だけを考えても、必ずしも条件が良くなるわけではない」
それが、西田翔がCrestixの取締役就任を迷っていた理由だった。
すでに自身の会社を経営し、営業代行やSNSマーケティングなどの事業を展開していた西田。あえて別の会社に加わる必要は、表面的にはなかった。
それでも、縞谷から約2週間にわたって連絡が届き続けた。
そして、ある日のカフェで西田は決断する。
「お前、しつこいな。もう一緒にやろう」
なぜ、自分一人でも生きていける力を持つ経営者が、未完成なCrestixを選んだのか。西田が考える営業、人材育成、責任、そして自由について聞いた。
プロフィール
西田 翔|株式会社Crestix 取締役
高校卒業後、ビル設備メンテナンスの仕事からキャリアをスタート。その後、広告代理店、DMMグループのSaaS企業で営業、新規事業、部門立ち上げを経験した。
営業として2年連続で年間MVPを獲得し、マネジメント職を経て独立。現在は株式会社GrowthPathの代表取締役として、営業代行、SNSマーケティング、パートナーセールスの3事業を展開している。
2025年12月、GrowthPathの経営を続けながらCrestixの取締役に就任。本人の言葉を借りれば、現在の仕事は「営業を教えてる人」。より正確には、営業組織の売上を生み出す仕組みをつくり、メンバーが成果と収入を得られる環境を整える役割を担っている。
自分の会社に使える時間も、売上も減るかもしれなかった
――Crestixの取締役になることを、最初は迷っていたそうですね。
西田:
迷っていた理由は、大きく二つありました。
一つは、自分の会社であるGrowthPathに使える時間が減ることです。自分でつくった会社ですし、僕なりに意義を持ってやっていたので、簡単に手放したくはありませんでした。
時間をCrestixに使えば、その分、自社の売上にも影響が出る可能性があります。
もう一つは、収入面です。自分の会社だけを続けた場合に想定していた報酬と比べると、Crestixの取締役になることが、短期的に大きな経済的メリットになるわけではありませんでした。
――それでも、最終的には就任を決めました。
西田:
大きかったのは、GrowthPathを続けながらでいいと認めてもらえたことです。
縞谷さんにとっても、簡単な判断ではなかったと思います。それでも、僕が自分の会社を大切にしていることを理解したうえで、両立を受け入れてくれた。
それは、僕の中ではかなり大きかったですね。
あとは、投資に近い感覚もありました。一人で自分の会社を経営し続けるより、複数人で会社を大きくしていく方が、中長期ではより大きな価値をつくれるかもしれない。
何より、単純に一人でやるより、優秀な人たちと一緒にやる方が楽しそうだと思いました。
「断っても、どうせまた来るだろうな」と思った
――縞谷さんから、約2週間にわたって連絡が届いたそうですね。
西田:
しつこかったですね(笑)。
最終的に決めたのは、下北沢のカフェで話した日です。
僕は、ずっと悩み続けるのがあまり好きではありません。悩んでいるということは、心のどこかでは「一緒にやった方が面白いんじゃないか」と思っているということでもあります。
しかも、たぶん一度断っても、また来るだろうなと。
ここまで言ってくれている。縞谷さん自身も、頭の中でいろいろ計算しながら、本当に大丈夫なのかを考えている。それでも誘い続けてくれている。
だったら、駄目だったら駄目でしょうがない。一緒にやったら面白いことは分かっているんだから、もう行こうと決めました。
――初めて会った頃から、縞谷さんへの印象は変わりましたか。
西田:
最初は、若かったこともあって、少し生意気な子なのかなという印象は正直ありました。
ただ、自分も経営者になったことで、会社を背負う責任の大きさが分かるようになりました。その視点で見ると、縞谷さんにも責任感がついてきて、その責任に対して本当に実行しようとしていることが分かった。
大きな夢を語れる人は、実際には多くありません。
この人と一緒にやったら、面白いことができるかもしれないと思うようになりました。
それに、縞谷さんは人のことを本気で考えられる人です。少し相談された相手に対しても、本気で一緒に悩み、一緒に悔しがれる。
僕は基本的に、大事な人のことしかそこまで深く考えません。だからこそ、それを多くの人に対してできることは、すごいと思っています。
一人で稼ぐことしか、信じていなかった
――Crestixに加わって、西田さん自身に変化はありましたか。
西田:
一つは、「人に任せても大丈夫なんだ」と思えるようになったことです。
以前の僕は、人に任せることがあまり得意ではありませんでした。基本的には、全部自分でやる。自分でお金を生むことしか、信じていなかったタイプです。
でも、Crestixではメンバーが営業をして、売上をつくってくれる。その間に僕は、次の商品を考えたり、仕組みを整えたり、勉強したりできます。
人に任せるためには何が必要なのか。どのような仕組みや環境をつくれば、メンバーが成果を出せるのか。
そう考えられるようになったことは、自分の中で大きな変化です。
――一人で事業を続けることと、組織で進めることの違いを感じていますか。
西田:
一人でできることには、どうしても上限があります。時間も削られていきます。
誰かに任せられるようになれば、その時間を使って勉強したり、新しいものをつくったりできる。
ただし、メンバーが頑張ってくれている以上、任せる側は人一倍努力しなければいけません。時代に遅れないように学び続ける必要があるし、何かしらの分野で、メンバーから見てもすごいと思われる存在でなければならない。
人に任せることは、自分が楽をすることではありません。
自分の責任が、より大きくなるということだと思っています。
「やってないことは言わない」。まず自分が数字をつくる
――西田さんが、人を育てるうえで大切にしていることは何ですか。
西田:
やっていないことは言わないことです。
自分が分からない領域については、相手の方がプロです。だから、上から「今どうなっているの?」と聞くのではなく、「これがどうなっているのか教えてほしい」と聞きます。
逆に、自分の得意領域では、その人たちより自分ができる状態をつくる。そこはかなり意識しています。
――実際に、メンバーを指導するときも、まず自分で結果を出すのでしょうか。
西田:
そうですね。
あるメンバーは、最初に会った頃、数字を追う意識がまだ十分ではありませんでした。改善しようとはしていたけれど、成果を出すためのPDCAではなく、「次は何を話そうか」というところに意識が向いていた。
営業で大切なのは、話すこと自体ではありません。お客さまの心を動かして、受注につなげ、会社の売上にすることです。
ただ、口で説明するだけでは、なかなか伝わりません。
だから、そのメンバーが獲得したアポイントに僕も一緒に行って、実際に受注する。本人の数字や売上として、早く成功体験をつくることを意識しました。
できていない人から何かを言われても、聞きたくないことはあると思うんです。少なくとも、僕自身はそうです。
だからまず、自分が外に出て結果を出す。そのうえで話をする。
そのメンバーは今では、誰よりも深く考え、PDCAを回し、組織に貢献してくれています。
僕の義務は、キャッシュエンジンをつくり続けること
――現在のCrestixでの役割を、どのように捉えていますか。
西田:
僕の義務は、キャッシュエンジンをつくり続けることです。
キャッシュエンジンというのは、継続的に会社の売上や利益を生み出す事業や仕組みのことです。
そして僕の責任は、そのキャッシュエンジンで一緒に動いてくれているメンバーが、お金に困らない状態をつくることだと思っています。
Crestixは営業に関わるメンバーが多い会社です。
そのメンバーたちが売りやすく、成果を出しやすく、きちんと収入を上げられて、自分の目標に近づいていける。その状態を少しでもつくりたい。
だから、自社サービスの開発も進めています。
営業が売りやすいもの、利益率が高いもの、会社に早くキャッシュが入るものをつくる。自分だけが売るのではなく、メンバーが成果を出せる環境をつくることが、今の僕の仕事です。
――西田さん自身も、まだ課題を感じていますか。
西田:
もちろんです。
お金のつくり方についても、まだまだ未熟だと思っています。
世の中には、一人当たりの売上や利益が非常に高い会社があります。ビジネスモデルが違ったとしても、実際にできている人がいる以上、僕たちにもできないとは限りません。
まだ知らないやり方や、足りない経験がたくさんある。
だから、やるだけです。
メンバーが売上をつくってくれている間に、僕は次の仕組みをつくる。そうやって、今の壁を乗り越えていきたいと思っています。
責任と自由は、等価交換だと思っている
――西田さんは、仕事を通じてどのような未来を実現したいですか。
西田:
僕は、自由が欲しいと思っています。
自分の会社に使う時間も欲しいし、家族と過ごす時間も大切にしたい。
ただ、自由は何もしなくても与えられるものではありません。責任と自由は、等価交換だと思っています。
Crestixが僕の事情や生き方を理解してくれているからこそ、与えられた時間では最大限のパフォーマンスを出す。それが僕の意思決定です。
仕事も、自分の会社も、家族も大切にできているのは、僕一人の力ではありません。Crestixのメンバーや家族、自分の会社の仲間など、周囲に恵まれているからできています。
だからこそ、自分も責任を果たしたい。
営業メンバーが成果を出し、収入を上げ、自分の目標に近づける環境をつくる。その責任を果たした先で、僕自身も大切な人との時間を選べるようになりたいと思っています。
――最後に、Crestixで成長できるのはどのような人だと思いますか。
西田:
一つ目は、素直な人です。
もう一つは、「こうなりたい」「こうしたい」という思いがある人。まだ明確な目標になっていなくても、変わりたいという気持ちがある人です。
人は、本人が変わろうと思わなければ変わりません。
Crestixは、待っていれば誰かが人生を変えてくれる場所ではないと思います。
ただ、自分で変わろうとしている人には、本気で向き合う人がいる。口だけで教えるのではなく、一緒に現場に出て、数字をつくり、成果が出るところまで関わる人がいる。
一人でも生きていける力をつけたい。そのうえで、一人では見られない景色を、仲間と見てみたい。
そう思う人にとっては、面白い会社だと思います。
まずは一度、縞谷さんやメンバーと話してみてください。
たぶん、簡単には帰してくれないと思いますけど(笑)。